割当増資が消えた背景
増資とは
増資とは、企業が設備投資などの資金を調達するために新株を発行することだが、時代の変化に伴って、1980年代央から日本でもエクイティ・ファイナンス(新株発行を伴う資金調達)と呼ばれるようになった.
その背景は、日本経済が戦後の復興期を終え、拡大期さらに成熟期へと移行するにつれて、産業界・企業の資金調達方法が多様化していったからである。1949(昭和24)年の東証再開以来、1970年前後まで、上場企業の株式市場での資金調達といえば、株主への額面割当増資が中心であった。
この増資は、株価がいくら高くても株主は1株当たりの額面分を払い込めば、新株を取得できた。株価500円、1000円の銘柄でも、割り当てに応じて1株50円分を払い込めば新株を取得できたのだから、株主にとってはまことにおいしい増資といえた。
ところが、昭和30年代の設備投資ブームによって額面割当増資が急増、オーバー・イッシュー(供給過剰)から株式市場は消化不良に陥り、昭和40(1965)年の“証券不況’’を招き、発行・流通両市場ともに機能不全状態に落ち込んだ。
時価発行でウマ味は消えた
この反省をふまえて、証券業は届出制から免許制に移行(1968年)し、同時に日本企業の「自己(株主)資本充実」を旗印に時価発行増資がとり入れられ、ヤマハ、ソニーなどが先べんをつけて実施に入った。
時価発行増資は、時価(株価)に近い値段で新株を発行するものだけに、株主に割り当てるわけにはいかない。
そこで、必然的に公募せざるを得なくなったわけだが、公募とは名ばかりで、実質的に企業間同士の株式持ち合いが進行していった。
時価発行増資のあと、CBやWBが登場し発行企業の自己(株主)資本充実に−一役買った。こうした“時価"をベースとした新株発行では既存の株主はカヤの外に置かれた。 CB、WBを含めて時価発行増資は企業の自己(株主)資本を拡充し低コストの資金調達で競争力を高められるなど、長い目でみれば、既存の株主にもメリットがあった。
しかし、額面割当増資による”貯株”と資産増大の道を閉ざされた既存株主に大きな不満が残ったのは否定できないところだった。
一方、企業の経営者は時価発行によって簡単に資金調達ができるようになったため、本業では必要もないのに時価発行増資を行ない、土地やビルなどの不動産やゴルフ場開発資金などに回した。経営が甘くなったのだ。
そのツケが、バブル崩壊から株式市場の長期低迷、不良資産の巨大化をもたらし、日本経済の長期不況の一因になっている。
エクイティ・ファイナンスと名称を変えても、現在も増資は時価をベースとしたものが主流である。そこでは、発行体(企業)はウマ味を享受できても、株主には直接的なウマ味はない、と思っておくほうが無難だ。
なお、優先株や第三者割当増資は、時価発行増資の実施やCBの発行などができない企業が“苦肉の策”として行なうことが多く、個人投資家にはほとんど関係ない。
また、ストック・オプション(一定の価格で一定の期間に一定数の自社株を買うことができる権利)は、会社役員や従業員の報酬制度の1つであり、一般投資家には関係ない。
*設備投資 工場や機械などに投資すること。
*エクイティ・ファイナンス Equ.tyFlnanCe*顔面割当増資 株券券面の額面(50円が多い)に対して、1対1とか1対05とかの比率で割り当てる。
*株式持ち合い 会社が金額または数量を決めて、お互いの株式を持ち合うこと。
*株式持ち合い 会社が金額または数量を決めて、お互いの株式を持ち合うこと。
*貯株 株式を貯め込んで資産形成の一助とすること。
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